最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)678号 判決 1961年4月14日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一ないし第三点について。
既に消滅時効にかかつた他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは、民法五〇六条、五〇八条の法意に照らし許されないものと解するのが相当である。されば本件において上告人の本件手形取得当時既に右手形債権の消滅時効が完成し、被上告人においてこれを援用していること原判示のとおりである以上上告人のなした相殺の意思表示はその効力を生ずるに由ないものというべく、従つて右と同様の趣旨を判示して上告人の主張を排斥した原判決に所論指摘の違法ありとなし得ない。それ故所論はすべて採用の限りでない。
同第四点について。
所論は原審の専権に属する事実認定を攻撃するに帰着し、採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)